月経カップ

lefteye692006-08-14


endpointさんのコメントで思い出したので、月経カップについてまとめておきます。

月経カップ(Menstrual Cup)は、膣に挿入するタイプの生理用品。
1930年代、アメリカ人のレオナ.W.チャルマーが月経カップの特許を取り、1937年前後に製品化されたのがはじまり(画像はチャルマーの特許記載の図の一部)。ただし、1930年代初期にはダイアネット・カップという繰り返し利用可能な月経カップが売り出されていたらしく、こちらが先という説もある。ちなみに、前年の1936年にはアメリカで初のタンポン(アプリケーターつき)が売り出されている(タンパックス、アメリカ)。

月経カップ第二次世界大戦直前まで売られていたが、材質が硬かったため売れ行きは延びずあえなく事業は破綻。その後、1959年にタセット社(Tassette Inc)がチャルマーと組んで、よりソフトな素材の月経カップを売り出すも、結局1960年代はじめにまたもや倒産してしまった。登場の時期が早かったのだろうか。70年代以降のアメリカWomen's Health Movementの流れにのれば、ぜったい売れたと思うのだけど。

その後、キーパー(The Keeperアメリカ、天然ゴム製)が1980年代後半に売り出され、続いて、シリコン製のムーンカップ(Mooncup、イギリス、シリコン製)、ディーバカップ(DivaCup、カナダ、シリコン製)、ルネット(Lunette、フィンランド、シリコン製)が売り出された。使い捨て用では、インステッド社のソフトカップ(Instead, Softcup、アメリカ)が90年代後半に販売されている。

繰り返し使用できる月経カップ

使い捨て月経カップ


★ほとんど「月経カップの歴史」Menstrual Cups at the Museum of Menstruation and Women's Healthというサイトからの引用です。というか、このサイト、ブツの画像や特許用の図などが満載ですごい。日本のモノも含まれてます。

レイプ行動の進化

ソーンヒル&パーマーの「人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす」が邦訳されている。アメリカでは出版と同時にフェミニストから批判をあびたそうだが、フェミニズムの立場から進化心理/進化人間生態学的アプローチを取ること自体は可能だ(マーゴ・ウィルソンのように)。実際はどうだろう。#これから読みます。

関係ないけど、ソーンヒルは京大で国際動物行動学会が開催されたときに見たことがある。うろ覚えの印象ではドーキンス(動物学会かなにかの講演でみた@名古屋大だったか)に似た感じ。そのときはソーンヒルはまだ左右対称性について研究していた。

タンポンのかわり

昨日のホーム・レメディの続き。
Nelson(1976)のリストには、「タンポンに替わるもの」として以下の2つがあげられている。

  1. 古いペッサリーを使う。ペッサリーは穴のあいていないものを。
  2. 美術用、または、化粧用のカイメンに、糸をむすび、そのまま挿入。たくさん吸収したら取り出し、ゆすいで、また入れる。生理が終わったら、酢1さじを1カップの水にいれたものに、カイメンを15分ひたして洗う。乾かしてから、次の生理まで保存する。

両方とも、多い日用タンポンと同様の効果あり。

すごい手軽! ペッサリーはともかく、カイメンならすぐ使えそう。
タンポンはあまり安売りをしていないので、これはお得感が高い。

ペッサリーは、当時(1970年代後半〜)フェミニスト・ウィメンズ・ヘルスセンターが推進していた「セルフヘルプ運動」の中で、避妊具のひとつとして使用方法のトレーニングや普及が行われていた。なのでいまよりも簡単に手に入っただろう。避妊にペッサリーを使ってた人にとっては、「あーあれを生理のときも使えばいいのか」と超簡単だったことが想像できる。

カイメンは、セックスワークの現場で現在も使用されている@日本。私が聞いた話では、お客さんにバレないように、糸を結びつけたりはしないと言う話だった。あとからちゃんと取り出せるのか?と思ってたが、糸をむすべば大丈夫だ。次の生理のときにはやってみよう。

女性の健康専門家集団(アメリカ)

"Wemen's Health Specialists"
上に書いた「フェミニスト・ウィメンズ・ヘルス・センター」Feminist Women's Health Center第一号は、ダウナー&ロスマンを含むロサンゼルスの活動家たちが設立したもの。その後、各地にいくつもの「フェミニスト・ウィメンズ・ヘルス・センター」が作られ現在も活動を続けている。
そのうち、カリフォルニア州チコに1975年に作られたフェミニスト・ウィメンズ・ヘルス・センターは、1996年に名称を"Wemen's Health Specialists"(女性の健康専門家たち)に変え、ネットでもさまざまな情報を発信している。

その情報の中に、Del-Emと同じコンセプトで作られた「ホーム・レメディ」(家庭用治療薬)のリストがある。つまり、医療専門家に自分たちのからだの決定権をゆだねるのではなく、自分たちの手で自分たちの健康をコントロールする力を取り戻そう、というスタンスから、民間療法やサプリメントの飲み方まで色々調べて、自分たちの役に立ちそうなブツを集めてきたのだ。

チコのフェミニスト・ウィメンズ・ヘルス・センターでは、クリス・ネルソンChris Nelsonという人が1976年にまとめたホームレメディのパンフレットを配布していたようだ。"Wemen's Health Specialists"のサイトに掲載されているのだけど、見てみると異常におもしろい。

たとえば、Del-Emとおなじように、月経調節(遅れている月経を生じさせる=ごく初期の中絶も可能となる)用ということで紹介されているレメディには、マイルドなものから強いものまで種類がある。

マイルドなものとしてあげられているのは、

レッド・セージ、カモミールアメリサフラン エレキャンペーン、レモンバーム、パセリ、バジル

といったハーブ。これらを何種類か組み合わせることも可能らしい。

強いものは、

ペニーロイヤル、ブルー・ココシュ、ブラック・ココシュ、ミルラ、ビタミンC(生理予定日の前5日間に飲む)

など。日本では入手しにくいものもあるが、ココシュなんかはアメリカではその辺に生えてる木らしい。

アロマテラピーなどで、ジャスミンは流産を引き起こす危険性があるから妊娠中は使用を避けること、というような注意書きがあるが、それを逆手に取れば月経調整や初期中絶が可能になるという仕組みだ。ここにあげられているものは、料理にも使われるので、とても身近な材料ということになる。妊婦はマグロを食うなとか、走るなとか、なんかいろいろ言われるけど、こういう子宮収縮を促すような薬草を、初期中絶に利用しよう、という考え方は、ほんとに賢いというか、発想の転換というか、とにかく、自分たちの力になるものを知っている、という感じだ。

ただし、このパンフレット自体は1976年段階のもので、その後、これらを使った人たちがどうだったかという情報はないので、ホームレメディを試してみたい人は直接サイトをみて、分量とか飲み方とかいろいろ研究してみてください。わたし個人は、日本版のこういうのを作成したいなあと強く思っております。

DEL-EM続報

lefteye692006-07-21


70年代のアメリウーマンリブの中から生まれた月経吸引器「Del-Em」。妊娠のごく初期の中絶を女性たち自身が行うことができるという画期的な器具です。
これについて以前書いたときに、Del-Emの意味は、delete embryo(胎児を除去)か、delete them(それらを除去)みたいな意味ちゃうかな〜と書いたのですが、違ってました!!

しかも、Del-Em開発者のひとり、ロレーヌ・ロスマンさん本人から、直メールが来たんですよ。ぎゃ〜〜〜〜!! 受けとったときはもう興奮のるつぼでした。
そのメールによれば、Del-Emは、"Device for Lessening Menstruation"(月経(量)を軽減する器具)とのこと。Delはいいとして、、、Emないやん、と突っ込む気持ちもないではないですが*1、やはり月経を中心に考えた器具という点は強調しておく必要があったんだろうなあ、、と。

ちなみに、ロスマンさんが私の日記を読んで「間違っとる!」とメールをくれた、という訳ではもちろんなく、フェミニスト・ウィメンズ・ヘルス・センター(アメリカ)*2に問い合わせのメールを出していたのです。担当者の人が、そのメールをロスマンさんに転送してくれたそうで、本人からのお返事をいただけた、という訳。いやあ、10年前なら、こんな早く本人から返事がもらえたりはしなかっただろうと思うと、感慨深いです。

*1:MenstrationのMをエムと読む、ってことなんだろうと思います

*2:同じくDel-Em開発者のひとりであるキャロル・ダウナーさんたちが設立した

フェミニストJAPAN

ウーマンリブからフェミニズムに以降しつつあった1970年代後期、『フェミニスト JAPAN』というあからさまな名前の雑誌が刊行されていたのを知っている人は少ないだろう。私はいろいろ検索している中で発見したのだけど、みつけた時は「はあ〜〜?なんじゃこれ」と、大爆笑してしまった。タイトルだけでなく、発行者名もずばり「フェミニスト」。それ誰よ、とツッコミを入れたうえで編集陣をみると、編集責任者は渥美育子さん*1、創設委員には松井やよりさん、水田宗子さん、カメラ担当が松本路子さんと有名な名前がならんでいる。なのに、なんであんまり知られていないのか。

フェミニストJAPANは、創刊号が1977年8月15日に出版された後、1980年までに全17号が出版されている(私は16号までしか持ってない)。リブの有名な雑誌『女・エロス』は1号(1973.11.28)〜17号(1982.6.25)までなので、後半で重なってたようである。

1号(1977)は、表紙がオノヨーコという、これまたベタな作りで、「ザ・フェミニストって感じの雑誌作ろうゼ!」と盛り上がっていたであろうことは容易に想像できる(そうか?)。…と、ちょっと冗談ぽく書いているけれど、こういうの、意外と好きなんです。いろいろな点で引っかかりつつも、内容上の必要性には賛同するし、個人的にミニコミ好き、機関誌好きというのもあるので「フェミニストJAPAN」はもっと注目されてしかるべき雑誌だと思っている。

思っているのだけど、最近、この雑誌をチェックしていて、驚愕する文章に出会ったのでここに記します。まず巻頭。ここには次のような宣言が掲載されている。

燃えるように
エネルギーを燃焼させて
各国の自立する女たちと
宇宙船“Sisterhood”号に乗ってから
わたしには地球のゆがみが見えるようになった

もっとよく見たい わたし自身の目で
影になっていた半球も
これはわたし達の出発!
靴下は破れていても
わたし達は美しい
(「フェミニストJAPAN」1号(1977)、表紙裏より抜粋)

うん、わかる。私のセンスではないけれど、こういうのもありだ。そして本文を読んで、最後に編集後記。その最後の段落がこれ。

■最近読んだものの中で、感動することばがあった。「女性的な女性にあって最も美しいものは、男性的な何かである。」
(「フェミニストJAPAN」1号(1977)、p64)

が〜〜ん! 宇宙船シスターフッド号に乗ってんのに男性的ななにかが一番美しいとか言うんすか! 影になってる半球、ぜんぜん見てねーよ!! うわ〜〜…。

ほんとに今の時代は、30年前よりも確実に良くなっているのですね。フェミニストジャパンはいろんな意味でおもしろいので、引き続きお伝えしていきます(たぶん)。

*1:現在はでっかい国際企業の社長。経歴は ここで読める

グッドニュース

lefteye692006-04-27

やー、また〆切に追われ気味な毎日です。
最近あった良いニュースはといえば、友だちに恋人ができたこと。まだ見てないのでその恋人が実在の人物なのかどうかは未確認です。その友だちとは10年くらいのつきあいなのですが、私がナラティブという言葉を知る前から、人間が生きるためには物語が必要だと強硬に主張しており、ここ数年はブログ中心の物語人生、Narrative based Medicineならぬナラティブ・ベイスド・ライフを送っています。田中課長、あなたのことですよ。読んでないだろうけど(他人の物語には興味を示さない傾向があります)*1

課長はモテ願望が強い(自称)のですが、課長の恋愛物語はあまりにもオリジナルなので共有されにくく、告っても理解されないという難点がありました。が、しかし、今回はどうやら、中学時代に万延していたような恋愛ストーリーに乗ることにしたらしく、それが功を奏しているようです。恋愛って、ほんと、物語を介した交流ですよね。既出の恋愛ストーリーに乗らないで恋愛することは可能なのか。

関係ないですが、課長には、繰り出すギャグが独自のナラティブに基づきすぎているため理解できない、という問題もありました。笑いも物語を介した交流です。共有されてる(と思われてる)恋愛&笑いのストーリー展開は、ヘテヘテ&家父長制っぽいものが多いと思うのですが、もし笑いや恋愛がこれらを共有しないと生じないものならば、どうやってフェミな恋愛&笑い基盤を作っていけばいいのかな。そろそろナラティブとは関係ない話になってきたのでここらで止めます。(っていうかナラティブの使い方間違ってますかね。)

*1:田中課長のナラティブはここで堪能できます