核心に

女性の健康に対する医療モデルについて調べている。すごいおもろい。医療人類学、社会疫学、地域精神科学、などなど、さまざまな分野で取り組みが進んでいる。病院で治療するのだけが医療、あるいは「健康」への道だという考え方は、非常に偏っているのだ(「健康」の一側面しかみていないのだ)ということに、あらためて気付かされる。

医療/健康における共同体モデル(community model)を調べていて、今月初めに出た以下の論文を発見。

社会的ネットワークのない乳ガン患者は、生存率が低くなる。

Kroenke CH, et al., "Social networks, social support, and survival after breast cancer diagnosis." J Clin Oncol. 2006 Mar 1;24(7):1105-11.


サンフランシスコの看護婦健康調査を用いた研究によると、乳ガン患者のうち、社会的ネットワークが乏しい人は、豊富な人に比べ生存率が低くなるという結果がでた。社会的ネットワーク・繋がりのに指標には「結婚の有無」「社交性」「教会の会員」「他の地域グループの会員」が要素となっているBerkman-Syme Social Networks Indexを使用している。また、近しい親類、親友、子どものそれぞれがいない人といる人(親類/親友は10人以上、子どもは6人以上)でも生存率に差があり、いない人の方が生存率が低くなっていた。これらは、乳ガン患者が、発症後に社会的ネットワークや親類、親友、子どもから死亡率を下げるようなサポートを受けていることを示唆している。

*学術論文だが概要はここにまとめられている(英語)。

この論文は、社会モデル、あるいは、共同体モデルに基づいた研究。「だから友だちや子どもがいない女性は死にやすい」とかが結論になるのでは救いがないし、そういう考察をするためにデザインされた調査ではない。乳ガン発症後の生存率が、生物医学的(バイオメディカル)な要素にのみ影響されるのではなく、地域との繋がりや、社会的関係性によって支えられている、ということを示すための第一弾。これにより、乳ガン患者への治療やケアを考える際、医療者は、患者の地域での生活基盤についても考慮に入れる必要があるということだ。この後は、実際にどのような要素が生存率の向上に影響があるのかを調べる、という展開になる。

ゾフィー・ショル、最期の日々

やばい。『白バラの祈り』が今週金曜で終わりだ。観に行かなきゃ。
まだ観てないのにフェミ映画に分類。
白バラの祈り─ゾフィー・ショル、最期の日々

『白バラ〜』の主人公ユリア・イェンチ、すごい好きなんです。といっても『ベルリン、僕らの革命』一作しかみてないけど。この映画は、左翼の若者が主人公ってとこで、もう、持って行かれてしまいました。よかったわー。

ベルリン、僕らの革命 [DVD]

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『ベルリン〜』を見たあと書いたレビュー。
ベルリンとチロルを舞台に繰り広げられる青春ラブストーリー。プラス、左翼。監督は東ベルリンでスクワット運動(空き家の占拠)を行っていた本物の左翼である。つまりこの映画は、監督の「エデュケーターズ」としての作品なのだ。それだけに、映画中盤の資本主義をめぐる議論は左翼学生なら誰でも通過するような本格的内容である。左翼の方にはお薦めだ。青春映画としては、とってもベタ。キスシーンは、ええ〜っ!?というほど少女漫画だし、三角関係をあらわすショットでは俳優が三角形に配置されるといった具合。そんな中、恋人ユールと中年男性ハーデンベルク役の脇役陣が特に印象に残った。最近ドイツでは、60年代左翼運動を振り返る映画が立て続けに撮られている。日本でも「光の雨」「突入せよ!浅間山荘事件」などが公開されたが、テーマが同じでもタッチが全く異なるのが興味深い。その違いはチロルの夏の別荘と冬の浅間山荘の違いに匹敵する。